2011年1月6日木曜日

曽祢まさこの『わたしが死んだ夜』

 サイコドラマとしては傑作の一つだと思います。たった100ページなのに長編を見せられたようなそんなマンガです。

 ストーリーは双子の姉妹の物語なのですが、どちらも勝ち気で互いに相手を憎み合っているというものです。あらすじは以下のページに詳しく載っていました。
http://malon.my.land.to/watasigasindayoru.htm
 これはまたずいぶん詳しくて、あらすじというよりほとんどそのままのストーリーでした。これに7ページの「女の子だねえ 鏡にしっと してるんだよ」とのおばあさまの一言が入れば完璧でしょう。

 曽祢まさこの作品を見たのはこれが最初でした。カヴァー絵は少女マンガそのものでしたがタイトルに惹かれて買ったのでした。で、ぐいぐいと引きずり込まれたのでした。
 読後感は、面白いけど怖いでした。なぜ怖いと思ったのかを考えてみると…

 心の闇を突きつけられたからが大きいのでしょう。双子の姉妹の心の動きを見せられて、自分ならどうするかを考えると、いいえ、考えられないというか、考えることを拒否するような気持ちになるのです、双子の片割れでなくてよかったというような。
 「あなたはきょうから死んだもおなじ (中略) 少女がそのことばで葬ったのはかの女自身の心だった……」と終わる物語。
 でも、それだけにこのマンガは魅力的なのです。ストーリーテラーとして最上の部類に入る人ではないのかと。

 さて、このマンガが描かれてから30年以上経ちました。その後、エバは、「事実を認めて強くなって(中略)クレアの分までしあわせをつかまなくては」とエドウィンに言われたように幸せを掴んだのでしょうか、クレアはまだエバのままなのでしょうか、気になるところです。

 なお、同時収録の『緋色のマドモアゼル』も面白い作品でした。

 曽祢まさこの、このマンガを最初に読んだのは幸いでした。もし、『妖精旅行』を読んでいたら、このマンガも、『幽霊がり』も『不思議の国の千一夜』も読まなかったでしょうから。

 書名『わたしが死んだ夜』
 出版社 講談社
 昭和54年11月5日第1刷発行

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