2015年9月29日火曜日

岡元あつこ(岡元敦子)の『ひいらぎ写真館』


 サンコミックス『ひいらぎ写真館』には、表題作を含めた七つのお話が載っています。1973年から1977年までに描かれたものです。
 くだん書房さんのホームページ http://www.kudan.jp/colum/colum02.html に~岡元敦子という星~があります。作品リストによると1986年までマンガを描いているようです。けれど、単行本としては二冊しか出ていないようです。一冊は世界名作コミックス『はつ恋』で、さすがにこれは目にしたことがありません。

 それでは作品を観ていきましょう。

 まずは『ひいらぎ写真館』ですが、話としては悪くないのですが、何かもうひとつ足りないような気がします。
 高校生の男女(柊順一郎と星野かおる子)のお話です。互いにクラス委員として、柊はかおる子に、かおる子は柊に負けたくなくてがんばっています。
 そんなある日、柊の父親のやっている写真館とは知らずに、かおる子が来て写真を撮ってくれるようにと頼みます。学校でのかおる子とはあまりにも違うので驚く柊、父の不在のために、かおる子の写真を撮る柊です。
 写真を撮り始めてから撮り終え、英語の課題を写させてくれと頼むまでの間に柊のかおる子についての回想があります。回想の最後は「ことあるごとに 彼女のことが気になってしかたが なぜだろう?」で終わっています。いっぽう、柊の英語の課題をやりながらかおる子は思います、「みんな柊順一郎くんのため ずうっとまえから大好きで」と。
 二人とも片思いだと思っているところが面白いのですが(いわゆる両片思いと云うのでしょうか)、お互いがそのことに気づくのはいつでしょうか。
 柊の撮った写真がもとで、写真館を継ぐ決心を固めるところでお話は終わっています。

 『紫色の扉』は、18ページ目まではどこにでもありそうな日常なのですが、終わりの6ページでしっかりとSFになっています。面白く読めました。
 『虹のおりる丘』は、北海道のパイロットファームでの高校生の男女のお話です。
 『不思議なタマゴ焼き』はコメディーでしょうか。タイトルをみて、「おしゃべりなたまごやき」と云う絵本を思い出しました。

 『黒い瞳のアヒルの子』はデビュー作とのことです。ニューヨークでのバレエマンガです。主人公の女の子(とは云ってもハイティーンです)と14歳の女の子、その兄と終わりのほうでわかる男の子がメインです。人種問題も出てきますが、恋愛の要素はありません。
 『17(セブンティーン)フリーダム』は、タイトルのとおり高校生のお話です。
 最後の『すずらん』は小学六年生に載ったものだそうで、ここではなにも言いません。

 40年ほど前のマンガなので、古いと言えば古いのですが、それなりに読めます。この話の中では『紫色の扉』が一番面白いと思います。40年も前のマンガなので、ネタバレも含めて少し書いてみます。
 両親は死んだと聞かされて育つ兄と妹、そしてばあやです。住んでいる家や、ばあやがいるところをみると、相当の資産はあるのかなぁなどと読んでいくと……
 紫色の扉の部屋だけは鍵がかかっていて、開けることができません。妹とかくれんぼをしていて、兄は本棚の上に八年前になくした本を見つけます。その本には銀の鍵が挟んであります。その鍵を紫色の扉の鍵穴に差し込むと扉は開きます。部屋の中には亡くなったと思っていた母がいて、兄に本当のこと…自分たちは地球人ではないこと、この部屋は星と地球を結ぶ入り口になっていることなどを教えます。そして、兄は宇宙旅行に耐える身体になったと言います。気を失っている妹はあと三年は地球にいなければならないとも言います。
 最後は、兄のロケット仲間の「ロケットだぞ」「今日はロケットの打ち上げ予定はないよ」「じゃあUFOかね…?」で終わっています。
 前半の日常風景がきちんと描かれているからこそ、後半が生きてきます。普通の子供として育ってきたのに、ある日突然そうではないと言われたらアイデンティティーは保てるのでしょうか、いろいろと考えさせられます。


 書名『ひいらぎ写真館』
 出版社 朝日ソノラマ サンコミックス SCM-464
 昭和52年11月15日初版発行


 岡元あつこのマンガの載っている雑誌が手元に何冊かありました。その中では『絵の中の翼にのって』が面白く読めました、悲しい最後ですが。小学館プチコミック秋の号昭和52年11月1日発行に載っています。

2015年9月14日月曜日

九月姫の『ココアにおまかせ!』


 この人は『モンスターメーカー・サガ』が代表作でしょう。1~6巻が出ています。3巻までで「ディアーネの冒険」は完結しています。4巻以降のお話は6巻の終わりで、続くになっていて、未完のままです。

 表題作は、「探偵マンガを(ギャグだけど)」と袖にあるように、ギャグマンガです。中学生なのに探偵事務所を構えるココアと敵役で子供嫌いなブラック博士、モンスターメーカーシリーズの魔女ルフィーアちゃんが登場人物です。
 初めに読んだ時に、あれっ第2話で国に帰ったルフィーアちゃんが第3話で出てきているのはなぜ?と思ったのです。目次を見て納得しました、第2話だけが別の雑誌に載っていたのです。特別編として最後に入れて欲しかったなあと思います。

 第1話は探偵局の紹介と、春が来ないので何とかして欲しいという花の精(男と女がいます)がでてきます。マンションの日陰になって雪が溶けない花壇の花の精です。鏡を使って雪を溶かすアイディアはブラック博士が出すのですが、お礼はココアが受け取ります。花の精の男からのキスです。「やりすぎだって言ってるでしょっ」と花の精の女から怒られている花の精と、「次の依頼者は人間で美形がいーなお金持ちの…」とわくわく顔のココアの齣で終わっています。このマンガを読んで真っ先に思い浮かんだのは、オスカー・ワイルドの「わがままな巨人」です。もちろんマンガには大男は登場しませんし、宗教色もありません。

 第5話には、博士の優しい一面が描かれています。
 第6話では、博士に召喚された悪魔が登場して、古典的な方法でガラス瓶に閉じ込められます。「その手にはのらんぞ」と言っている悪魔ですが、お菓子のティラミスにつられて瓶に入ってしまいます。1990年にはティラミスが流行していたのがわかります。
 第9話では正月太りになったり、第10話では博士の作った薬で身体を小さくしたりしています。この薬はおいしいものを食べる時には威力を発揮しています。

 第13話と第14話では博士の作ったココアの分身ロボットが活躍(?)します。ロボットは13話では事件で忙しいココアの、「後のことは頼んだわよ」に「まかせてください」と胸を叩きます。朝、ココアが帰ってくるとぐっすり寝ていて宿題は真っ白です。「立たされちゃう~~」とのココアに、魔女は云います、「いくらでも立ってられるマホーかけてあげる」と。
 14話ではヨーロッパに出張中の両親に、夏休みに会いに行くとココアに聞いたロボットが行方不明になります。一週間後、「ココアのそっくりロボットが来てくれてパパもママもハッピー もう夏休みに来なくていーよ」との手紙と、航空運賃請求書を受け取ります。そこに、「ココアの代わりにおこってくれる」ロボットを連れて博士がやってきます。14話の扉絵は『とんでもドールあかねちゃん』の広告になっています。
 ここに登場するロボットは、役に立たないどころかココアの足をひっぱています。けれど、ココアのやりたいことを忠実に実行しているようにも見えます。

 第15話は夏休みのお話です。夏休みが始まって海に行きます。岩に挟まったイルカを助けると、竜宮城へと案内されるのですが、これがボロボロなのです。乙姫から「時給10円で清掃と土木作業を」と頼まれて、早々に帰ります。帰ってくると、もう8月31日になっているのです。慌てて終わらない宿題を始めるココア。乙姫との立ち話だけで一ヶ月以上も経ってしまうのかと。浦島太郎が見知らぬ所に帰ってくるのも納得できました。

 第18話では学園祭の企画で、学校の地下にダンジョンを掘って、学校を陥没させてしまいます。
 第20話では正月に南の島ごっこをして、ココアとルフィーアは風邪で一週間も寝込んでしまいます。1992年2月号で、まだバブルの余韻は残っているようです。

 126ページの「九月姫におまかせ!」には、2巻目は近日発売でーす とありますが、結局でませんでした。2巻と3巻は同人誌として出たようです。

 この人のマンガを買ったのは、ペンネームに惹かれたせいかもしれません。サマセット・モームの「九月姫とウグイス」は読んでいませんが。


 書名『ココアにおまかせ!』
 出版社 発行所 宙出版 オオゾラコミックス MSL-0009
     発売元 主婦と生活社
 1993年3月10日 初版第一刷発行


 このころは ここあ と云う名前はまだなかったと思います。いつの頃から出てきたのでしょうか。