2016年5月31日火曜日

沖倉利津子の『日曜日はげんき!!』


 作者のマーガレットコミックスで最初に出版された本です。「セッチシリーズ」が四作品とその他が三作品入っています。

 セッチシリーズにはタイトルに曜日が入っていて、「日曜日はげんき!!」、「水曜日にウェンズディがやってきた!!」、「月曜日ハンパ者の乱」、「土曜日はなんの日!?」となっています。
 それではセッチシリーズを見ていくことにしましょう。

 中学一年生のある日曜日からお話が始まります。

 『日曜日はげんき!!』はシリーズの最初の作品で主な登場人物がほとんどでてきています。主人公のセッチ(武田世津子)、親友のえみちゃん(上杉栄美)、おにいちゃん(セッチの隣家の大学生でセッチの家庭教師、小林鉄)、そしてセッチのクラスメイトで委員長の川中島弘です。
 勉強がキライで、長いスカートが我慢できないセッチには、授業も制服もカンケーない日曜日は天国なのです。
 野球で川中島に見事に三振を喫したセッチは、川中島が気になります。けれどえみちゃんも川中島に気があることを知ります。その川中島からえみちゃんの誕生日を訊かれて、身を引くセッチ、それを見守るおにいちゃんです。

 うじうじしないであっさりと身を引くセッチは、悩んでもしょうがないと割り切ったのでしょうか。おにいちゃんの心の内はまだ知らないようです。12ページにおにいちゃんの内心が書いてあるのですが、ふと疑問に思ったこと……6つちがいのおいらの妹とあります。小林鉄は19歳です。中学一年のセッチは12歳か13歳ですが、12月24日が誕生日で二十歳になる鉄とは学齢では七つ違いなのです。えみちゃんとの交換日記が6月5日 Sun なので、セッチが4月か5月生まれならば6つ違いもわからないではないですが。
 ここまで書いて、舞台の1977年が今年2016年と三月以降が同じ曜日配列なのに気がつきました。

 『水曜日にウェンズディがやってきた!!』 火曜日におにいちゃんから逃げ出し野球をするセッチ、野球を観ている(セッチに云わせると感じの悪い)金髪の少女がいます。次の日、都内の中学校からアメリカ人の兄妹が転校してきます。兄ディビー・ダーリングは三年生、妹ウェンズディは前日の少女でセッチのクラスです。
 その行動でクラスの女の子から孤立するウェンズディですが、セッチとえみちゃんの力で何とかクラスに溶け込みます。セッチとウェンズディとの壮絶なとっくみあいの末なのですが。「案ずるより産むがやすし 似たもの同士のいいコンビよネ」とのえみちゃんの思いが書かれています。
 最後の齣はしっかりとギャグになっていますが、セッチが鉄への想いを初めて表したシーンでしょう。

 『月曜日ハンパ者の乱』は生徒会選挙を巡る話です。
 近所の低学年の小学生と飛行機飛びの競争をして、セッチは右手を骨折して入院します。入院中にさまざまな理由で入院している人の事情を見聞きします。たとえば、インターハイまで行ったのにアキレス腱断裂で短距離走ができなくなって落ち込んだけど、まんが家になることに生き甲斐を見出した高校生とか。
 さて、生徒会選挙なのですが、この中学校は三つの小学校からの生徒の集まりなのですが、生徒会の主導権を握るために争うような状況です。今回の選挙にも三組が立候補します。その過程でセッチは今の生徒会の制度を作ったのは鉄だったことを知るのです。
 ところが、新たに四番目の立候補グループが現れます。現副会長が小学校の枠を取り払い、川中島を副会長候補として立候補します。立候補登録はされますが、各グループからは嫌な顔をされます。「やだってしょうがない これからいそがしくなるぞ」と張り切る第四グループの生徒たち。
 セッチは「なんでだろう… なんでやなことなのにがんばれるんだろう… あたしってなんにもわかってない……」と思うのです。
 投票前の最後の応援演説を頼まれたセッチは、入院中のことを話し、「……健康なのにこんなおしのけあい…してケンカしてたんじゃ申し訳ない」と最後は涙をこぼします。
 選挙の場面でマンガは終わっていて、結果はありませんが、タイトルからすると自ずとわかるでしょうとなります。

 生徒会選挙なのにセッチの入院から話が始まるのにはちょっと驚きますが、それが応援演説の伏線になっているのです。
 四つの中では中学生らしいテーマで、これが一番面白く読めました。
 しかし揚げ足を取るようですが、10月31日に生徒会選挙をする学校があるのでしょうか、任期はいつまでなのでしょうか、二年生が会長候補なので、11月から次の年の10月までなのでしょうか、などとの疑問が湧いてきます。
 いつセッチが骨折したのかは描かれていませんが、手首(終わりのほうの齣から見ると)の骨折かひびが入ったのなら、そんなに長く入院とも思えないのですが。

 『土曜日はなんの日!?』 12月24日土曜日は鉄の二十歳の誕生日です。プレゼントのマフラーを編み始めるセッチですが、いろんな事があってなかなか進みません。鉄には三人の姉がいて、二人は学校の先生、一人は教授夫人です。鉄は高校の国語の先生になりたいと云います。
 ある日、鉄の車の運転席側がめちゃくちゃになっています。止まっている時に横から突っ込まれたとのことで、本人も同乗者も幸い軽い怪我で済みます。
 「おとなになると考えがかわる」と鉄の姉の勝三(かつみ)に言われてセッチは思うのです。「おとなになれば考えかわるかしれない でもいまのあたしがキライなおとなには絶対なりたくない」
 徹夜で何とかマフラーを編み上げるセッチなのでした。

 小学校の先生の要はいつも煙草が手放せないようです。まぁ、40年も前のマンガだから良しとしますか。最後の齣に教授も登場しているのですが、若くして教授になったようで、その人をつかまえた姉の馨も優秀なのでしょう。
 あれほど車がひどいことになっているのに軽傷とは運が良かったのでしょう。大学の前で車をぶつけられて、その車で家まで帰ってくるとは思えませんが、どうなのでしょう。
 大学生になったら酒も煙草もかまわないというのは、このころは当たり前だったのでしょう。今の少女マンガでは無理でしょうね。
 「土曜日はなんの日!?」の最初のページに鉄が車を買い換える話が出てきますが、車種にはちょっと考えさせられました。セリカ、マークII、フェアレディZ、コスモが候補として出てきています。一体誰がお金を出すのだろうかと思わずにはいられませんでした。

 デビュー作の『ふたりの場合は…』が、セッチシリーズの次に載っていますがここでは触れません。


 書名『日曜日はげんき!!』
 出版社 集英社 マーガレットコミックス MC 338
 1978年4月20日 第1刷発行  手元のものは1983年3月15日 第16刷

2016年5月16日月曜日

ちょっと休憩 『美の祝典 I -やまと絵の四季』


 東京の出光美術館に表記の展覧会を見に行ってきました。
 顔料の数が少ないのに、着色の作品はそれなりに観られるし、飽きませんでした。

 『伴大納言絵巻』に触れないわけにはいかないと思いますので、少し。
 展示されているのは上巻なのですが、駆けつける検非違使たちから始まって、風下で炎上する応天門を見る庶民と、風上からのんびりと(?)見る貴族たち、場面変わって、天皇を諫め申し上げる藤原良房で終わっています。
 続きが気になるところは、「つづく」で終わるマンガみたいですが。

 風下の庶民の多くの烏帽子が渦を巻くように描かれているのは、火災旋風を表しているとのことで、なるほどなぁと感心してしまいました。関東大震災や東京大空襲の時のことは本で読んで知っていましたが、平安時代にも知られていたんですねぇ。
 炎上する応天門では、炎の描き方に引き込まれました。赤と朱の二色しか使われていないはずなのにもっと色数が多いように感じました。

 応天門炎上は貞観8年(866年)で、絵の描かれたのはそれからおよそ300年後とのことで、赤穂浪士の討ち入りを現代の人が描いたのと似たようなものかと思いました。
 貞観と云えば、6年には富士山が噴火し、11年には大地震が起こってと、その間の時期に都ではこんな事があったのですかとの感想を抱きました。


 東京都美術館にも行ってみたのですが、行列の長さに挫けてしまいました。国立西洋美術館で『カラヴァジョ展』を観て帰ってきました。

2016年5月2日月曜日

岡田あーみんの『お父さんは心配症』


 このマンガを読んだのは最近です。作者もタイトルも知ってはいましたが、読んでいませんでした。

 お父さんと16歳の高校生の娘・典子のお話です。母は他界しています。
 父は娘のことが心配でたまりません。どんな些細なことでも典子のことになると見境がなくなります。と云うわけで、同級生でボーイフレンドの北野くんは父親の目の敵です。

 ギャグマンガを説明することは野暮だと思いますので、そこは略させてもらいます。

 第21話からはお父さんの見合い相手の安井千恵子と息子の守がでてきます。典子は「守くんみたいなやさしい子大好きだもん」と言っています。
 第47話で交通事故でなくなったお父さんですが、そこはギャグマンガ、生き返り安井さんにプロポーズして、つぎの最終回は結婚式で終わります。が、最後のページはしっかりとギャグマンガです。

 ギャグマンガなのですが、それだけでは終わりません。
 読んでいて感じたことを一言(ではないかもしれません)でいうと、「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな」です(「おもしろうてやがて寂しき花火かな」と鵜舟がごちゃ混ぜになって最初に「おもしろうてやがて悲しき花火かな」が浮かんだのは内緒)。
 チャップリンの映画のような趣もあります。映画は終わりがしんみりが多いのですが、このマンガは中間でしんみりが多いように思えます。

 もっと早くこのマンガを読んでいれば良かったと云うのが偽らざるところです。

 書名『お父さんは心配症』 1~6巻
 出版社 集英社 RIBON MASCOT COMICS 351, 381, 405, 431, 463, 490
 1巻 1985年11月20日 第1刷発行 2014年 6 月 7 日 第73刷発行
 2巻 1986年 9 月17日 第1刷発行 2014年 6 月 7 日 第61刷発行
 3巻 1987年 5 月20日 第1刷発行 2014年 6 月 7 日 第47刷発行
 4巻 1988年 1 月19日 第1刷発行 2015年 8 月10日 第39刷発行
 5巻 1988年11月20日 第1刷発行 2015年 2 月11日 第30刷発行
 6巻 1989年 7 月19日 第1刷発行 2014年10月11日 第31刷発行
 右側が手元にあるものです。りぼん創刊60周年記念特別企画と帯にあります。


 同時に『こいつら100%伝説』と『ルナティック雑技団』も出ています。
 『ルナティック雑技団』は三作品の中では、ギャグマンガですが一番少女マンガかもしれません。けれども、タイトルの意味がわかりません。本質がギャグマンガなので変な登場人物が多いのですが、主人公の森夜の母親以外はそれほどルナティックな人物はいないようです。また、雑技団は何を意味するのでしょうか、人生はサーカスだよと云われれば、そうかなぁと思わないでもないのですが。