2012年5月27日日曜日

西谷祥子の『マリイ・ルウ』

西谷祥子は、なんとなく前の世代のマンガ家として、ほとんど読んでいませんでした。
 記憶にあるのは、「花びら日記」の、アルバイト、是か非かの場面と、友だちが劇団に入ってどうこうの場面だけです。あるいは別のマンガとごちゃごちゃになっているかもしれません。

 表題の作品は1965年の後半に週刊マーガレットに載っていたものです。およそ半世紀も前のマンガです。
 2003年に新たに出版されたものを本屋で見かけて買ってきましたが、そのまま積ん読になっていました。表紙の、目の中にきらめく星に、何でこのマンガを買ったのだろうとの後悔があったのかもしれません。きわめて典型的な古い時代の少女マンガとの思い込みがあったのでしょう。

 読んでいて古き良き時代の少女マンガとは思いましたが、面白く読めました。

 アメリカのハイスクールを舞台にした Boy meets girl (Girl meets boy かもしれませんが) の典型的なマンガです。
 大学生の姉のローラは、妹のマリイルウもうらやむほどの美人で、取り巻きの男達が大勢いつも家に押しかけてきています。そんな中に、道路からローラの部屋の窓を見上げるハンサムな青年がいます。ジョージという名前で、マリイルウは一目惚れをします。
 そのジョージ・スコットからパーティーへの招待状をもらって喜ぶマリイルウですが、ローラが付き添いで行くことになります。ところがせっかくのドレスをペンキ屋のはしごにぶつかってペンキがかかりだめにしてしまい、パーティーには行けなくなってしまいます。ジョージの車に乗ってローラは帰宅しますが、別れ際に二人はけんかをしています。
 ハイスクール時代にローラとジョージはつきあっていて、結局二人は婚約します。
 マリイルウは、ジョージの後輩で、ペンキ屋のアルバイトをしていたジムと、つきあうことになります。この二人がつきあいを始めるまでが、このお話の後半なのですが、そこは割愛させてもらいます。

 絵はさすがに半世紀前のものなので、今の読者にはつらいものがあるかもしれません。また、設定にも現在にはどうかというのもあるかもしれません。けれどテーマは今でも十分に通用するものと思います。登場人物の一人ひとりの心理描写の濃やかさや、それに至る環境設定は決して古びていません。
 それに、結果がわからなくて、ドキドキしながら読んでいても、悪いことにはならないはずという予定調和なので、安心して読めます。


 書名『マリイ・ルウ』
 出版社 白泉社
 2003年9月13日 第1刷発行


 単行本としては、「マリイ・ルウ」は最初に集英社マーガレットコミックスで出版されていて、MC 1 になっています。同時に出たのが、わたなべまさこの「ハイジ」と、水野英子の「すてきなコーラ」で、いずれも 1968年1月5日初版発行になっています。
 表紙の絵を見ると、目の中の星は集英社版の方が多いようです。

 朝日ソノラマのサンコミックスは、少女マンガもありましたが、少女マンガのみを扱ったものはマーガレットコミックスが、最初のようです。