2016年12月5日月曜日

清原なつのの『花岡ちゃんの夏休み』


 以前に清原なつのを取り上げた時に、「タイムトラベル」シリーズと「花図鑑」シリーズに惹かれたと書きましたが、今回取り上げるのは私が作者に惹かれたきっかけになったマンガです。

 ネットを見ると書評がたくさんありすぎて困ってしまいます。面白いマンガなのですがその面白さが、拙い文章で伝わるものなのか悩みます。
 『花岡ちゃんの夏休み』には、五つの短編が入っていて、表題作と、次の『早春物語』が続き物です。カヴァー袖の作品かいせつによるとこの間が七ヶ月あり、途中にもうひとつの作品が入っています。

 以下のホームページにあらすじがあります。
 ストーリーを教えてもらうスレ まとめ Wiki* (http://wikiwiki.jp/comic-story/?%B2%D6%B2%AC%A4%C1%A4%E3%A4%F3%A4%CE%B2%C6%B5%D9%A4%DF) 
 また以下にも興味深いことが書いてあります。http://meganekkokyodan.org/iincho/この眼鏡っ娘マンガがすごい!/この眼鏡っ娘マンガがすごい!第92回:清原なつの/
 
 では、作品を見ていくことにしましょう。

 まず表題作『花岡ちゃんの夏休み』から。花岡数子と簑島さんの物語です。いちおう恋物語なのかもしれませんが、ちょっと変わっています。
 簑島さんは大学三回生、花岡ちゃんは何年生なのかは直接は描いてありませんが、一回生か二回生です。話の中でお見合いをする場面があります。金沢が舞台のお話なのですが、40年前には二十歳前のお見合いは普通だったのでしょうか。
 ストーリーについてはここではあまり触れません。本屋で一冊の本(ロバートブラウン物語)を花岡ちゃんと簑島さんが取り合うところから始まります。喫茶店で二人は百本の線を引いたあみだくじで本の決着を付けます。その喫茶店の壁に貼ってあるメニュー(?)はかなりこまかくて読むのに苦労するのですが、面白いものです。そして本を手に入れた花岡ちゃんが「ばいばーい」と去っていく壁には「おみやげコーヒー」の貼り紙が。これにはクスリとさせられます。

 なんだかんだがあって、毎日公園に出かけて簑島さんと話をする花岡ちゃんです。しかしまわりからきこえる簑島さんについての話は以下のようです。「天才級の IQ、ありあまる才能、総ハゲといううわさ、吸血鬼だとも言われている」などです。「吸血鬼はかまわないけど、ハゲだけは」と花岡ちゃん。
 お見合いの席で、「ちょっと御不浄へ」と云って抜け出し、いつもの公園に行く花岡ちゃん。できあがった童話を読み聞かせる簑島さん。その時強風が吹いてきて、簑島さんの帽子が飛び、カツラが飛び、簑島さんのツルっパゲが顕わになり、「さようなら」と帰ってしまう花岡ちゃん。
 親友の美登利から「簑島さんのどこにひかれたのか…」考えろと云われます。
 次の日、公園に行き「きのうのつづき……」と云う花岡ちゃん。

 こうして書いてみると、一体何に惹かれたのかなぁと思います。きっと花岡ちゃんの悩み苦しむところに共感したのだと思います。読み返してみると、今は花岡ちゃんの悩みよりも、ストーリーの喜劇的なところに惹かれます。
 若い頃に読んだ倉橋由美子の初期の小説ほどではありませんが、ある種の観念をマンガにしたのかなあとも思えます。

 つぎに『早春物語』です。つきあい始めた花岡ちゃんと簑島さんですが、そこに美人で才女の笹川華子さんが登場します。笹川さんは花岡ちゃん同学年なのですが、考え方はどう見ても大人です。笹川さんは簑島さんとつきあおうとするのですが、振られてしまいます。「いつもきれいな笹川華子さん どうせわき役ふられ役」と一人やけ酒の華子さん。
 花岡ちゃんが簑島さんの胸に飛び込んでお話は終わります。

 八重子おばさんの花岡ちゃんの部屋でのシーンで、背景の本棚の本にはしっかりと「ロバートブラウン物語」があります。つぎのページには「花岡ちゃんの……」のタイトルの本が三冊あります。70ページの二齣目の貼り紙には BBT, TNT, EDTA, EBT とありますが、最初の BBT は BT ではないのかなぁなどと余計なことを。でもそれなら EBT と同じだしなぁとも。
 手元の本は第4刷なので、78ページの下から二番目の齣の「ボクガイルジャナイ」は、ありました。ハヤカワコミック文庫にはありません。以下にこのセリフが消えたことについて色々あります。 http://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=1986&id=6710508
 最後の齣に「GOOD BYE HANAOKA CHAN」とあります。これで終わらせるつもりだったのでしょう。しかし三年後の『なだれのイエス』で本当に終わりになっています。

 当然と云えば当然なのですが、ハヤカワコミック文庫の後書きマンガとは絵の余りの違いに時の流れを感じたり……。

 この二つのマンガを今初めて読んだとしたなら、あの頃と同じように面白いと思えるのかはわかりません。それでも、どこかに引っかかるものがあるのだと思います。

 書名『花岡ちゃんの夏休み』
 出版社 集英社 りぼんマスコットコミックス RMC-140
 1979年1月10日 第1刷発行 手元のものは1979年7月15日の第4刷です

 ハヤカワコミック文庫
 『花岡ちゃんの夏休み』
 2006年3月10日 印刷
 2006年3月15日 発行


 今日から7年目になります。この一年は7月に書いてから四ヶ月も放置してしまい、もっとコンスタントに書けたらなぁと思っています。
 細々とではございますが、もう少し続けようと考えております。