2018年2月12日月曜日

東屋めめの『すいーとるーむ?』


 東屋めめを知ったのは『リコーダーとランドセル』の第三巻が本屋に平積みになっているのを見た時でした。面白いのかなぁと、まず第一巻を買ってみました。翌日には三巻までを買っていました。
 他にはないのかなぁと捜して目に付いたのが表題の『すいーとるーむ?』とデビュー作の『ご契約ください!』です。とりあえず『すいーとるーむ?』の第一巻を買い、ちょっとしてから五巻までを買いました。この時にはまだ最終の六巻は出ていません。もちろん、『ご契約ください!』も買いましたけど。

 一回、(原則)八ページで四齣マンガが15本載っています。四齣マンガですのでストーリーはありません。一回15本でのつながりはありますが。
 OL のゆかりさんが主役で、部長、主任、中途採用の後輩の男子(永井君)、部署の違う女子(美好さん)、そして以前勤めていて独立した女性(塩田さん)が登場人物です。一巻から四巻46ページまではセールス三人娘が登場します。四巻31ページから秋律子というアルバイトの女の子が出てきます。

 タイトルの「すいーとるーむ」が何を意味しているかは最初の四齣でわかります。新人の永井君が「おはようございます」とドアを開けるとパジャマ姿のゆかりさんが。終電を逃したのかと訊いてみると、「ここに住んでるの」との返事。生活用品一式が置いてあります。最初は通勤していたのが「毎日帰るの時間のムダ」と会社に棲みついてしまったのです。そして一巻50ページでは、会社の住所に住民登録をしていることまで出てきます。
 一巻26ページにセールス三人娘が出てきて、以後ときどき登場して、永井君が振り回されます。なにしろ売っているのが、家だったり宝石だったり絵画だったりするのです。そしていつの間にか契約をしている永井君。さすがに家とか宝石は買っていませんが。同巻36ページには塩田さんが登場します。これから先、永井君を巡りゆかりさんとのバトル(?)がしばしばあります。と云ってももちろん、男女関係ではありません。
 四巻31ページから登場する秋さんなのですが、なかなかに面白いキャラクターです。永井君には目もくれず、ひたすらゆかりさんに纏わり付くのです。しかも永井君を敵視しています。この三人の三角関係(?)は五巻にも続いていきます。
 ここまではまとめて読みました。2012年の二月のことです。最後の六巻はこの一年後に出ています。
 六巻には永井君が前の会社を辞めることになった先輩社員の吉川さんが出てきます。永井君が吉川さんに「好きです!」、「ごめんね無理」と振られ、「わかりましたここ辞めます!」が一齣で描かれています。前の会社では「退職理由に失恋」と書いて伝説となり、賭の対象にまでなっているのです。
 この巻の81ページには関心を少し永井君に向ける秋さんが描かれています。89ページには悩みをゆかりさんに相談する秋さん、93ページには転職した秋さんが描かれています。そして94ページには塩田さんと一緒に現れる秋さん。正社員としての転職先が塩田さんの会社で、天敵が二人になってうろたえる永井君。
 六巻の帯には「ゆかりさんいっちゃうの!?」「永井君の恋の行方は!?」とあります。最後の二話のお話はここではしません。
 この巻は35ページ以降は、六ページ11話が原則になっています。

 このマンガの面白さはその設定にあります。これまでにも四齣マンガで OL を扱ったものはたくさんありますが、通勤が面倒で会社に棲みつくというのはありません。究極の職住近接の勤務形態と云っていいでしょう。なにしろ通勤時間がゼロなのですから。もっとも遅刻しないかといえば、時計代わりの永井君が出張した時とかその他がありますが。
 仕事以外では、会社から五分の距離しか動かないというゆかりさんが主役で六巻も描くというのはたいしたものです。

 作者の描く OL マンガは設定がどこかとんでいます。このマンガにしても、『ご契約ください!』にしても、決してあり得ないはずなのに面白いのです。それは『秘書の仕事じゃありません』の秘書にも言えることですが。
 カヴァーのゆかりさんの顔が、巻を追うごとに険が無くなってかわいらしくなっていくのも面白いなぁと思います。

 三巻45ページだけが美好さんが三好さんになっています。


 書名『すいーとるーむ?』
 出版社 芳文社 MANGA TIME COMICS
 2008年1月23日第1刷発行 1巻 手元のものは 2010年5月15日第4刷
 2008年12月21日第1刷発行 2巻
 2009年12月22日第1刷発行 3巻
 2010年10月22日第1刷発行 4巻
 2011年10月22日第1刷発行 5巻
 2013年3月22日第1刷発行 6巻