2022年2月12日土曜日

みなもと太郎の『ホモホモセブン』

 みなもと太郎さんは昨年死去されました。未完の「風雲児たち 幕末編」を残したままで。 「風雲児たち」は「大乱戦関ヶ原」に始まっていて、竜馬の旅立ちまでは潮出版で出ています。第一巻は昭和57年(1982年)第29巻は平成九年(1997年)です。第30巻は外伝として出版されています。幕末編は29巻を受けて始まります。と云っても第24巻のおイネの話の続きから幕末編第一巻は始まっています。

 この人の書いたもので、マンガではありませんが、「お楽しみはこれものなのじゃ みなもと太郎のパロディ笑劇場」と云うのがあります。マンガ評といったものでしょうか、面白いものです。これは朝日ソノラマの「マンガ少年」の創刊号(1976年9月)から三年間(1979年8月号)に渡って載ったもので、その後河出文庫から「お楽しみはこれものなのじゃ」で出ているようです。手塚治虫に始まって最後は西谷祥子で終わっています。

 さて表題のマンガですが昭和45年(1970年)から昭和46年の少年マガジンに連載されたものです。今はネットで読めるようです。

 始まりは劇画調のシリアスな絵と場面からです。さながら「ゴルゴ13」の始まりのような、今の少年雑誌には載せられないだろうと思われる始まりです。五ページ目の最後のコマに主人公がギャグマンガの絵で登場します。主人公ホモホモセブンとレスレスブロックとの戦いのマンガなのですが、内容が破天荒なのです。(ギャグ)マンガの常として、どんな目に遭っても主人公は死ぬことはありません。また、始まりにホモホモ2号がレスレス11に殺される以外に味方が死ぬような事はないようです。しかしこのマンガではずいぶん大勢が死んでいっています。それもレスレスブロックの女の人が。

 「レスレス7喜々一発」にはレスボス島が地図と共に出てきます。サッフォーの出身地で、レズビアンの語源ともなった島ですが、このマンガではとんでもない形で出てきています。この話には大阪万博の後始末が出てきます。ばんぱくやつわものどもがゆめのあとで終わっています。その後が一ページ程ありますが、ギャグマンガの決まりでしょう。

 連載開始が1970年と云う事で、サイケデリック調の絵が出てたり、映画の健さんシリーズのパロディーがあったり、谷岡ヤスジのムジドリや楳図かずおの絵が出てきたりと賑やかです。この頃は学生運動の盛んな頃です。1970年3月にはよど号ハイジャック事件が起こっています。前年には東京大学に機動隊が入っています。「片手にゲバ棒、片手にマガジン」と言われていたのもこの頃でしょう、半世紀も前の出来事です。しかしこのマンガには学生運動を思わせるものはありません。だからこそネットで読めるのかもしれません。今読み返しても面白く読めます。

 第3話に登場するセブリーヌですが、ホモホモセブンの思い女(びと)として最終話の最後のコマでセブンと抱き合って微笑んでいます。ドストエフスキーの「罪と罰」のソーニャが思い浮かんだのは何故なのでしょうか。


書名『ホモホモセブンシリーズ』 1巻 COMIC MATE 43 2巻 COMIC MATE 47

出版社 若木書房

1, 2 巻とも昭和52年12月24日 第6刷発行 初版はいつ出たのでしょうか


 HOMO で LUMO が思い浮かぶのは私だけではないでしょう。