2011年4月29日金曜日

コンタロウの『東京の青い空』

 コンタロウといえば『1・2のアッホ!!』や『いっしょけんめいハジメくん』などのギャグマンガが知られています。この『東京の青い空』は唯一のSFマンガとのことです。

 正味44ページで、PART 1 失踪(11ページ) PART 2 抜け穴(11ページ) PART 3 動機(11ページ半) PART 4 真相(10ページ半) となっています。このページ割りをみると、起承転結を、同じページ数に割り振ったように見えます。

 ふたりの少年(俊一と圭太)とひとりの少女(ルミちゃん、白血病で余命幾ばくもない)を縦糸に、横糸には神田警部と水野(身分は出てきません、刑事でしょうか)のふたりでしょう。
 最初にネタバレを書きます。第三次世界大戦後の地下都市東京の物語です。
 では、ストーリーを。

 最初のページは爆破事件の発生と、そのニュースをカーラジオで聞いているトラック運転手です。次のページでそのトラックを停める少年たち、銃で運転手を脅して、Z地点に行くように言います。
 この辺で舞台が現在ではないらしいことがわかります。
 この三人がいた孤児院の院長が自殺したようだということで、神田警部と水野が登場してきます。少女が読んでいたらしい本を、警部は水野に手渡します。古めかしい本で百年以上も前のもので、タイトルは「東京の青い空」です。

 Z地点でエレベーターで地上に出ようとする三人ですが、着いたところは、荒れ果てた(三人にはそれが何かわからないのですが)地下鉄の駅でした。駅にも、傾いた電車の中にも白骨死体がありました。帰ろうとするのですが、ルミちゃんの気分が悪くなり、たくさんの骸骨のある電車の中のシートにルミちゃんを横にします。
 水野はZ地点のことを調べ、忘れられた抜け穴だったことを知ります。そして、地上に向かった三人のことが臨時ニュースで流されます。

 なぜ、どのようにして三人は地上へと向かったのかに疑問を抱いた水野は、それを調べようとします。
 一方、電車内の三人は大ネズミの大群に襲われますが、銃で撃退します。そしてつぶやきます。「ボクらに銃を くれるなんて (中略) あのタヌキみたいな顔のおじさんは」と。
 神田警部が失踪事件についての調査報告を発表します、青い空を見るために地上に出たのではないかと。
 水野は盗まれた銃がないことを知ります。喫茶店であれこれ考えている水野ですが、そのときテレビで失踪事件のことが流れます。女性評論家は言います、「(少女が)つぶやいた、死ぬ前に ひと目 青い空が 見たいわ…と(中略) 少女の願いを かなえてやるために 危険を 承知で 地上へ…」
 「いつも ピリピリ してる この辺の 連中が 涙を?」これで水野は真相に気づきます。
 大ネズミが出てこないことを確かめて三人は戻ろうとしますが、フタが開きません。内側から鍵をかけられてしまったのです。

 このマンガはeBookで出版されているようなので、最終章を細かく書くのはやめておきます。
 この芝居の脚本をかいたのは政府でした。
 「この地下でたえなければならんのだ! いつの日か 地上が 浄化され 東京の 青い空の下でくらせる日まで!!」と、神田警部は言います。
 三人は地上へと向かい、青い空ではなくオーロラの輝くきれいな色の空を目にします。
 「2112年現在の磁極は東京をつらぬいている」との放送でマンガは終わります。

 小学生がこのマンガを読むと、おとなは汚いというのでしょうか、あるいは水野さんは子どもの味方というのでしょうか、それはわかりません。けれど、このマンガはさまざまの視点から読めるのがいいのではないでしょうか。
 地下都市を維持していかなければならない立場からすれば、三人の命以上のものが得られるならば……というのもわからないではないのです。でも、もっと別の解決法がなかったのかとの思いも残ります。
 三人を縦糸に、警部と水野を横糸にと書きましたが、この物語は、織物ではなく、編み物なのかもしれないなあと今は思います。一本の糸から紡がれる物語なのかなあと。


 書名『東京の青い空』
 発行所 創美社 ジャンプスーパーコミックス74
 1980年9月15日


 四月は、先月の地震もあり、最初と終わりのほうだけにしか書けませんでした。来月はどうなることでしょうか。 

2011年4月1日金曜日

中森清子の『東京マグニチュード8.2』と古屋兎丸の『彼女を守る51の方法』

 『東京マグニチュード8.2』が意外に多くのかたの目に留まったようなので、その内容を書いて、古屋兎丸の『彼女を守る51の方法』についても少し触れておきます。

 今の地震への標語は「グラッときたら身の安全」が第一で、第二が脱出口の確保、次に火の始末になっています。揺れの時間はせいぜい一分間と考えられているようです。ところが、今回の大地震は揺れが五分間ほども続いたのです、揺れが収まったかと思うとまた揺れを繰り返したのです。後で知ったのですが、この地震は3つの連動した地震だったとのことです。ですから揺れの時間が長かったのです。

 『東京マグニチュード8.2』はおよそ30年前の作品です。マグニチュード(M) 9.0 の地震が実際に起こってしまった今からみれば、いろいろと変なところもみられるのですが、あらすじを追ってみましょう。なお、以下のページは集英社漫画文庫のものです。

 主人公の香川緑は高校生で、化学の実験中に大きな地震が起こります。スカートに火がついて慌ててそれを消す緑、しかし周りでは、火だるまになっている級友が数人。階段から逃げようとしますが、階段は火の海です。窓から、下のプールに飛び降り、何とか校舎からは脱出します。以下、29ページから40ページまで校庭での出来事になり、校庭に地割れができ、落ちた教師を閉じ込めて、地割れはまた閉じてしまいます。M 8.2 ではこのようなことが起こるとは思えません、このシーンは誇張でしょう。
 町営グラウンドに逃げようとするのですが、余震でビルからガラスが降ってきて倒れる級友も。53ページまでがグラウンドに着くまでの描写です。
 グラウンドに着いたのはよかったのですが、水道の水は出ません、そこに雨が降り出し喜んだのですが、灰や砂を含んだ雨で、飲めたものではありません。疲れ果てて座り込む主人公たち、そこを、動物園を逃げ出したライオンに襲われます。作者の頭には1979年の千葉県君津市にある神野寺のトラ騒動があったのではと、想像してしまいます。
 何とかトラから逃れ、84ページからは地下鉄のトンネルを通っての逃避行です。ようやく地上に出た4人(委員長の脇坂、山下、親友の関マコ、主人公)の目の前には、99ページに描かれた、飴のようにねじ曲がった東京タワーがありました。
 この後、コンビニから勝手に持ち出した食べ物を巡るトラブルがあり、脇坂が別行動をとります。三人になったところに、警官ひとりとふたりの男のグループが現れ、警官がピストルで山下を脅し、動きを封じて、残りのふたりが緑とマコを襲おうとします。この危機は何とか切り抜けますが、山下は、警官に撃たれて太ももに怪我をします。銃声を聞きつけた脇坂が戻ってきて、また四人で行動します。病院をみつけますが、人影はなく、そこにあった消毒薬を使い、包帯を巻きます。137ページに「たった1日で」とありますので、ここまでで夜が一回あったことになります。

 以下は、ネタバレというか、いくら何でもそれはないんじゃないのというシーンが続くのですが…。
 池袋の主人公の家にたどり着くためにタバコ屋の角を曲がるのが143ページですが、そこで見たものは、一面の水浸しの光景でした。
 さらに襲ってくる津波に追われ、サンシャインビルの屋上に逃げる四人ですが、途中でマコが津波にさらわれ、三人は何とか屋上にたどり着きます。屋上から見渡すと遠くのビルで、誰かが火をたいているようです。泳ぎに自信のある脇坂は海に飛び込みますが、すぐにサメに襲われてしまいます。
 瀕死の山下は緑に「おれ… きみが… ずっと 好きだったんだ」と言い、「救助隊が くるまで ……」「がん…… ばろうな」とほほえんで目を閉じます。
 アメリカ軍のヘリコプターに発見され、救助される緑。
 兵士たちは、「生存者モ 数エルホドシカ イナインダロウナ……」と話しています。
 水に沈んだ東京の上を飛ぶヘリコプターのシーンでマンガは終わります。

 前に、突っ込みどころがあると書いたのは、後半に多いのですが、それはやめておきましょう、昼の東京都区内が水没すれば、一千万人からの人が亡くなるのは、わからないではないです。でも、サンシャインビルが傾き、水没するとは考えられません。そのほかにもあるのですが、やめておきます。


 書名『東京マグニチュード8.2』
 出版社 集英社  集英社漫画文庫
 昭和58年2月25日 第1刷発行


 つぎに古屋兎丸の『彼女を守る51の方法』ですが、一応のことは、Wikipedia にありますので、そちらをご覧くださるようお願いします。書きかけ項目になっていますが。

 こちらは現実味があるというのは、震災とその後の大勢の登場人物が、ありそうな設定になっているところにあります。また、津波はでてきませんが、帰宅困難者というところは、このたびの東北地方太平洋沖地震の際にも問題になりました。

 書名『彼女を守る51の方法』
 出版社 新潮社
 いつの出版か、余震で本棚が壊れたままなので今のところわかりません。


 地震から三週間経った今日現在、死者・行方不明者は28,000名を超えてしまいました。