2011年4月1日金曜日

中森清子の『東京マグニチュード8.2』と古屋兎丸の『彼女を守る51の方法』

 『東京マグニチュード8.2』が意外に多くのかたの目に留まったようなので、その内容を書いて、古屋兎丸の『彼女を守る51の方法』についても少し触れておきます。

 今の地震への標語は「グラッときたら身の安全」が第一で、第二が脱出口の確保、次に火の始末になっています。揺れの時間はせいぜい一分間と考えられているようです。ところが、今回の大地震は揺れが五分間ほども続いたのです、揺れが収まったかと思うとまた揺れを繰り返したのです。後で知ったのですが、この地震は3つの連動した地震だったとのことです。ですから揺れの時間が長かったのです。

 『東京マグニチュード8.2』はおよそ30年前の作品です。マグニチュード(M) 9.0 の地震が実際に起こってしまった今からみれば、いろいろと変なところもみられるのですが、あらすじを追ってみましょう。なお、以下のページは集英社漫画文庫のものです。

 主人公の香川緑は高校生で、化学の実験中に大きな地震が起こります。スカートに火がついて慌ててそれを消す緑、しかし周りでは、火だるまになっている級友が数人。階段から逃げようとしますが、階段は火の海です。窓から、下のプールに飛び降り、何とか校舎からは脱出します。以下、29ページから40ページまで校庭での出来事になり、校庭に地割れができ、落ちた教師を閉じ込めて、地割れはまた閉じてしまいます。M 8.2 ではこのようなことが起こるとは思えません、このシーンは誇張でしょう。
 町営グラウンドに逃げようとするのですが、余震でビルからガラスが降ってきて倒れる級友も。53ページまでがグラウンドに着くまでの描写です。
 グラウンドに着いたのはよかったのですが、水道の水は出ません、そこに雨が降り出し喜んだのですが、灰や砂を含んだ雨で、飲めたものではありません。疲れ果てて座り込む主人公たち、そこを、動物園を逃げ出したライオンに襲われます。作者の頭には1979年の千葉県君津市にある神野寺のトラ騒動があったのではと、想像してしまいます。
 何とかトラから逃れ、84ページからは地下鉄のトンネルを通っての逃避行です。ようやく地上に出た4人(委員長の脇坂、山下、親友の関マコ、主人公)の目の前には、99ページに描かれた、飴のようにねじ曲がった東京タワーがありました。
 この後、コンビニから勝手に持ち出した食べ物を巡るトラブルがあり、脇坂が別行動をとります。三人になったところに、警官ひとりとふたりの男のグループが現れ、警官がピストルで山下を脅し、動きを封じて、残りのふたりが緑とマコを襲おうとします。この危機は何とか切り抜けますが、山下は、警官に撃たれて太ももに怪我をします。銃声を聞きつけた脇坂が戻ってきて、また四人で行動します。病院をみつけますが、人影はなく、そこにあった消毒薬を使い、包帯を巻きます。137ページに「たった1日で」とありますので、ここまでで夜が一回あったことになります。

 以下は、ネタバレというか、いくら何でもそれはないんじゃないのというシーンが続くのですが…。
 池袋の主人公の家にたどり着くためにタバコ屋の角を曲がるのが143ページですが、そこで見たものは、一面の水浸しの光景でした。
 さらに襲ってくる津波に追われ、サンシャインビルの屋上に逃げる四人ですが、途中でマコが津波にさらわれ、三人は何とか屋上にたどり着きます。屋上から見渡すと遠くのビルで、誰かが火をたいているようです。泳ぎに自信のある脇坂は海に飛び込みますが、すぐにサメに襲われてしまいます。
 瀕死の山下は緑に「おれ… きみが… ずっと 好きだったんだ」と言い、「救助隊が くるまで ……」「がん…… ばろうな」とほほえんで目を閉じます。
 アメリカ軍のヘリコプターに発見され、救助される緑。
 兵士たちは、「生存者モ 数エルホドシカ イナインダロウナ……」と話しています。
 水に沈んだ東京の上を飛ぶヘリコプターのシーンでマンガは終わります。

 前に、突っ込みどころがあると書いたのは、後半に多いのですが、それはやめておきましょう、昼の東京都区内が水没すれば、一千万人からの人が亡くなるのは、わからないではないです。でも、サンシャインビルが傾き、水没するとは考えられません。そのほかにもあるのですが、やめておきます。


 書名『東京マグニチュード8.2』
 出版社 集英社  集英社漫画文庫
 昭和58年2月25日 第1刷発行


 つぎに古屋兎丸の『彼女を守る51の方法』ですが、一応のことは、Wikipedia にありますので、そちらをご覧くださるようお願いします。書きかけ項目になっていますが。

 こちらは現実味があるというのは、震災とその後の大勢の登場人物が、ありそうな設定になっているところにあります。また、津波はでてきませんが、帰宅困難者というところは、このたびの東北地方太平洋沖地震の際にも問題になりました。

 書名『彼女を守る51の方法』
 出版社 新潮社
 いつの出版か、余震で本棚が壊れたままなので今のところわかりません。


 地震から三週間経った今日現在、死者・行方不明者は28,000名を超えてしまいました。

3 件のコメント:

  1. すみません、何とかトラから逃れと書いてしまいましたが、
    何とかライオンから逃れ、の間違いです。訂正します。

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  2. 静岡の彩季堂です。ブログ上では始めまして(笑)
    「東京マグニチュード8.2」、Amazonで見たら中古品(昭和58年初版)が3500円とトンデモナイ値段でした。でも、他のネット古書店で500円+送料のところを発見、さっき発注したところです。「骨董品」の値段って分かりませんねえ。
    「彼女を守る51の方法」の方は、完結したら読もうと思っているうちに忘れていましたが、5巻で完結してたんですね。こっちはAmazonに発注しました。

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  3. はじめまして
    実は、このマンガのことはすっかり忘れていたのです。このたびの地震で、転げ落ちなければ、それっきりだったかもしれません。
    それにしても3500円は高いですねぇ。

    三か月になろうとしている今、死者・行方不明者が28,000名から23,600名になったことが唯一の救いでしょうか……

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