2017年9月22日金曜日

松本和代の『フレンズ』


 だいぶ前にこの作者の『もな子…しゃべり勝ち!』を取り上げました。今回は最初の単行本の表題作を取り上げます。カヴァーを見る限りはギャグマンガです。それは間違ってはいません。けれども見方を変えるとけっこうシリアスな展開もあったりします。

 女子高に通う女の子二人と、男子校に通う男の子二人が主役です。
 舞台になっている街はダイエーはあり、マクドナルドもあり、通学には電車を使うようなところです。59ページにチバ県立東高校とありますから、千葉県が舞台なのでしょうが、東京の通勤圏ではないようです。
 インターネットで千葉県立東高校を調べると、千葉県立千葉東高校がヒットして、千葉市にありました。40年近く前の千葉市はこんなにものんびりしてたのでしょうか。

 楠本美之(みゆき)と横瀬香織の二人の女子高生が角井哲明君と桃田岩男君の二人の男子高生と出会い、付き合いを始めるというと、身も蓋もなくなりますが、これが面白いのです。
 美之と角井の出会いはダイエーの地下の食品売り場です。横瀬はお好み焼きを、美之は焼きそばを買うことにして、焼きそば大盛りでと頼むのですが、いつものおじさんではなくアルバイトの若い人がいます。それが気になって次の日、一人でまた行くと、バイトに「今日も大盛りですか」と言われて逃げ出す美之です。三日目に横瀬と行ってみるともうバイトはいません。縁がなかったとあきらめます。
 同級生の真矢から聞いた喫茶店で二人は、男同士で喫茶店に来ているバイトの男の子に出会います。東高校生で角井と桃田という名前です。三十分ほど話して別れます。東高校の校門前で待ち伏せをする二人ですが、40分ほど立っていてあきらめて、肉まんあんまんを買って公園で食べているところに角井と桃田が現れます。まんじゅうを食べながらの話がしばしあって、日曜日に四人でデートになります。デートの場所はなんとラーメン屋です。そのデートもうまくいきますが……。
 美之は角井と真矢が親しくしているのを何度か目撃します。それを見てもやもやする美之。真矢が角井の従妹と知るまでの80ページ近くは面白く読めます。と云ってもほんの二、三日しか経っていませんが。204ページの美之と真矢の顔の対比には笑ってしまいます。笑いを堪えられない美之とぶすっとした真矢と。
 最後の三ページがなかなかに面白いものです。角井に付き合って欲しいといわれ、顔を赤くする美之、最後のページは大きな一齣で、樹の下で赤い顔をして「あの…あの…」と言う角井と、赤い顔の美之で終わっています。

 この終わり方がいいなぁと思ったものです。ここから先は描かなくてもわかるでしょと云うところが初々しい二人をうまくあらわしているなぁと。
 カヴァー袖には食欲増進オトメチックまんが!とあります。確かに食べている場面は多いです。そもそもの出会いからして焼きそば大盛りですから。高校の場面も昼休みが多いし。美味しそうに昼食のシーンもかなりあります。
 このマンガのタイトルもよく考えられていると思います。友達同士として美之と横瀬、角井と桃田が出てきて、四人が友達になって、美之と角井、横瀬と桃田が付き合ってと、関係がわかりやすくなっています。


 書名『フレンズ』
 出版社 集英社 MARGARET COMICS MC 512
 1980年9月30日 第1刷発行 手元のは1981年1月30日 第3刷です