2012年12月5日水曜日

奥友志津子の『冬の惑星』

 惑星フェルサリアは、最高気温が氷点下20度以上にはならない星です。そこにも地球からの人類が住んでいます。普通人(コモン)からは、ネオと呼ばれる超能力者達です。  ケイトに言わせると、「わたしたちは 地球を追われた のじゃないわ わたしたちが 地球を捨て たのよ」ということになるのですが。

 以下にあらすじを書きます。
 主人公のロドニーはネオですが、それを知っても両親は彼を手元に置き育てますが、14歳の時に町の人にネオと知られて、リンチを受け両親は死亡します。瀕死のロドニーは救われてフェルサリアに送られてきます。
 念波の強さによる能力の可能性でロドニーの出した値は∞(無限大)でした。
 ロドニーはケイトに「超越者として あの人間どもの上に 君臨する方が ずっとたやすくて 楽なのに」と言いますが、ケイトの返答は先に記したものでした。ロドニーはこの考えの隙をフェルサリアの女神サラヴィーアに突かれることになります。
 一万年の眠りから覚めた女神サラヴィーアはロドニーを見つけ「わたくしの小さな騎士(ナイト) わたくしのかわいい とりこ」とつぶやきます。
 ロドニーの能力はみるみるうちに開花していきます。
 何度目かにサラヴィーアに会ったときに、彼女は一ヶ月以内に地球帰還の発表があることを告げます。そしてロドニーを地球に連れて行きます。実体ではなく虚像…精神のみを送ることで。地球で姿を見られて、サラヴィーアは何のためらいも見せず小さな兄妹を殺します。それを見て動揺するロドニーに彼女は言います。「まだまだ感情が不安定ですね それが命とりにならぬよう気をおつけなさい」と。
 三週間後の地球帰還が発表されますが、失踪者が続出します。その中に友だちのジニもいます。テレパシーの輪を広げてジニの行方を突き止めますが、そこはいつもサラヴィーアに会っていたところでした。行ってみると失踪者みんなが精神の欠落した状態です。現れたサラヴィーアは「コントロールを柔順に 受けいれるには ほんの少し精神が 強すぎたのです」といいます。
 そこにケイトが現れます。ケイトを守るためにロドニーはサラヴィーアと戦うことになります。相打ちにはできると、ケイトを基地の中にテレポートしてから、ロドニーはサラヴィーアに挑みます。
 医務室でロドニーはケイトに言います。「やっと見つけたよ地球を ぼくの心の中に 歩き出すよ 君たちの中へ」

 人類と新人類の対立を避けるために、二つの星に棲み分けると云ってしまえば身も蓋もなくなってしまいます。そこに一万年前は温暖な気候だった星を舞台にして、その頃の文明を回想の形で出してきたところが面白く思えました。
 疑問に思ったことを二つほど。
 一つめは、フェルサリアは地球からどのくらい離れたところにあるのだろうかということです。コールドスリープで渡ってきたとありましたが何光年と云うことは具体的にはありません。
 二つめは、地球に行ったサラヴィーアがどうして人を殺せたかです。虚像…精神のみで人を殺せるのだろうかと云うことです。精神がこのマンガのキーワードだから可能だと云われればそうですが…。


 書名『冬の惑星』
 出版社 東京三世社 シティコミックス
 昭和59年1月1日初版発行


 前回からいつの間にか三か月以上が経ってしまいました。前回はまだ暑かったのに、今はしっかりと暖房を使っています。
 今日から三年目に入ります。最低でも月に一度は更新したいと考えています。