2015年12月5日土曜日

鈴木光明の『もも子探偵長』


 今回取り上げるマンガは、帯に「連載から55年 初単行本化!!」とあるものです。
 マンガ史を観ると必ずと云っていいほどに出てくるマンガです。一体どんなマンガかと興味がありました。それにしても復刊ドットコムのマンガとはいえ、上下二冊で7000円(税抜)はちょっと高いかなぁと。上巻366ページで、下巻は286ページです。ページ数とハードカバーの本から見ると仕方がないのかもしれませんけれども。

 登場する女の子は、もも子のほかにキジ子とワン子で、ちゃんとタイトルどおり桃太郎のパロディーになっています。三人は中学生です。また、惹句には「こわいまんが」と書かれています。

 最初の事件は「金のオルゴール」で102ページあります。第1回が9ページ(カラーです)、第2回が11ページ、残り82ページが第3回です。今から見ると不思議な配分のようですが、月刊誌の頃は別冊付録がありました。下巻の口絵ページを見ると第3回は別冊付録だったことがわかります。
 第1回の初めに、もも子が「りぼんたんていだん」を作った事と登場人物の紹介があります。掲載誌が「りぼん」なので当然の命名でしょう。金のオルゴールの製作者・雪村五郎と、オルゴールをだまして手に入れた宝田との争いと云っては、少し単純でしょうか。
 もも子達は宝田の依頼を受けて事件に介入し、くろかげぬまのまぼろしやしきに手漕ぎの舟で渡ります。88ページで、宝田が札束の上下だけに本物を使った偽札で雪村をだました事がわかります。もも子達をもだまして舟で島を脱出しようとする宝田ですが、一緒に舟に乗った娘は父を責め舟から湖に身を投じます。宝田は泳げません、娘はもも子に助けられます。それを見て、改心する宝田です。金のオルゴールは雪村の手に戻ります。

 次の「黒い手事件」は3回で46ページです。3話の「海のはかば」は2回目が、4話の「三角やしき」は3回目が別冊付録です。
 以上で上巻は終わりで、2話以外は悪人が改心して終わっています。

 下巻は「まぼろし人形のひみつ」(48ページ)、「かっぱ沼」(96ページ)、「ゆうれい鬼」(57ページ)、「おおかみこぞう」(40ページ)、読切(18ページと16ページ)が2編です。この六つの話では「スキー場の天狗」以外では改心して終わりにはなっていません。きちんと犯人は罰せられることでしょう。「スキー場の天狗」には本当の意味での悪人はでてきていません。

 ネットで見るとこのマンガについての評価は高いようです。1958(昭和33)年から1959(昭和34)年の丸二年にわたっての連載という昔のマンガを目にできるのはありがたいことです。絵は手塚タッチというのでしょうか、丸みを帯びた線で描かれています。でも明らかに手塚の絵でないことはわかります。作者の個性が出ているのでしょう。

 このころの少年マンガを見ると『まぼろし探偵』(少年画報1957年3月号から1961年12月号)、『少年ジェット』(ぼくら1959年から三年間)などが探偵もののようですが、『もも子探偵長』とは趣が違うようです。 Wikipedia によれば二人ともオートバイに乗って現れるとありますので、16歳以上と云うことになり、もも子よりは年上です。

 今から見ると、絵は確かに古く、ストーリーとしてもどうかなと思う場面もあるのですが、面白く読めます。今の子供が読むかどうかはわかりませんが。
 「金のオルゴール」についてはあらすじを紹介しましたが、少し手を入れれば今のマンガになりそうに思えます。ただし今のマンガだと、最後は娘を見捨てて宝田は逃げそうな気がします。そして、もちろん最後は捕まりますが、反省しないとか……。これではちょっと子供向けにはならないでしょうね。
 「海のはかば」では、腑に落ちないところがあります。三十数ページに渡って海中の場面があるのですが、ごく普通に三人は会話を交わしています。アクアラングを付けての会話ができるのでしょうか。とはいえ、会話がないとストーリーが進みませんから、仕方がないのかもしれません。
 「三角やしき」はストーリーとしてはまとまっていると思います。

 下巻については割愛します。

 扉絵を見ていて気がついたのですが、もも子が右を見ている絵は二枚しかありません。日本のマンガは右綴じなのでそのせいかもしれませんが。それと、マンガを見ていて気がついたのですが、人物の正面を向いた絵がないような気がします。

 このころの少女マンガは、水野英子が『銀の花びら』(原作緑川圭子 1958年)や『星のたてごと』(1960年)を描いています。また、少し時代は下りますが、以前に取り上げた西谷祥子の『マリイ・ルウ』(1965年)があります。それらのマンガとはだいぶ違った感想を持ちました。


 書名『もも子探偵長』上巻・下巻
 出版社 復刊ドットコム
 2015年1月26日 上巻 初版発行
 2015年2月25日 下巻 初版発行


 今日から六年目になります。途中挫けたりもしましたが、何とか五年は持ちました。次は七年目を目指すことになるのでしょう。

 仙台は明日12月6日から2本目の地下鉄・東西線が走ります。南北線からの乗り継ぎですと、バスよりかなり割安なので、終点の動物公園に行ってみようかなぁなどと考えています。