2019年2月12日火曜日

伊東愛子の『こねこのなる樹』


 昨年暮れ(12月20日頃)ラジオから「猫畑」と云う言葉が流れて、思い浮かんだのが『こねこのなる樹』でした。でもタイトルだけで作者も内容もすっかり忘れていました。たぶんこの辺じゃないかなと捜したところ、伊東愛子の同名の本が出てきました。伊東愛子はこの「こんなマンガがあった」で一番初めに取り上げた人です。
 で、早速読んでみました。こんなお話だったのかと改めて思いました。

 両親を亡くし、アパートで兄と暮らす高校三年生の勝美ですが、結婚して子供のいる姉が拾った子猫を連れてやって来ます。もとからいた猫と併せて三匹になってしまいます。大家さんから一匹は飼っていいよといわれていたのですが、その一匹の他にもう一匹拾った猫がいたのです。それで三匹です。
 夜に庭から猫の鳴き声、逃げ出したかと慌てて庭に出ると二匹の子猫が。一匹は怪我をしていて、結局二匹とも家の中に入れます。
 翌日学校で猫のもらい手の話をする勝美ですが、学校帰りに子猫をいじめている子供から猫を救います。こうして子猫は都合六匹になります。
 もらい手も見つからず、あれやこれやがあり、大家さんの孫娘にばれてしまいます、そして大家さんにも。六匹ときいて驚く大家さんです。
 「なぜ急に子ネコが集まったのかしら?」との勝美の疑問に「お姉ちゃんちの裏庭に「こねこのなる樹」があるからよ」と孫娘の指さすところには銀色毛皮のねこやなぎが。
 この孫娘は赤ちゃんの時に両親を亡くしています。それが語られているのが22ページなのですが、孫娘は最近両親を亡くした勝美を可哀想に思い見ていたのです。

 高校生ですから、進路の悩みも出てきます。働きながら専門学校と初めの頃は考えているのですが、結局は姉や兄の勧めで大学を目指します。
 最後から二つ目の齣には、兄の友達で参考書をくれた男が出てきて、最後の齣は顔を赤らめる勝美で終わっています。

 最近は野良猫を見ることは滅多にありません。でも昔はけっこう見かけたような気がします。猫に首輪は滅多にないようで、飼い猫が外に出ることも多かったようです。このマンガは昭和53年一月号に載ったものなので1977年に描かれたもののようです。確かにこのころはかなりの数の猫がうろついていたのでしょう。

 マンガのタイトルは大事なのだなあと思ったものです。中身はすっかり忘れていても風変わりなタイトルだけはしっかりと覚えているのですから。
 後書き代わりの制作エピソードに花郁悠紀子が出てきますが、彼女は1980年に亡くなったことが書かれています。


 書名『こねこのなる樹』
 出版社 朝日ソノラマ sun comics 641
 昭和56年4月30日初版発行


 ネコヤナギと猫は、萩尾望都のマンガにネコヤナギネコが一齣か二齣出てきているような気がするのですが、確かめていません。