2011年12月5日月曜日

山田ミネコの『最終戦争』シリーズから「ペレランドラに帰りたい」

山田ミネコといえば、すぐに思い浮かぶのは「最終戦争」シリーズです。このシリーズを始める10年も前からマンガを描いています。貸本マンガとのことですが、さすがにそれは見ていません。
 1995年にオウム真理教の事件があり、この人も間接的に非常に大きな被害(?)を受けています。シリーズの「最終戦争」にはハルマゲドンのルビが振ってありましたので。

 表題作は白泉社の『冬の円盤』に載っているものでシリーズ初期のものです。
 扉絵は内容には関係のない絵で、ひとりの男と人間ではないもの(胸に山田の名前があります)との次の会話が載っています。「おまえ 気は不確かか?」「だいじょうぶ ちゃんと狂っているよ」
 東京三世社の少女SFマンガ競作大全集版ではタイトルの下には次の言葉があります。
 SFは応々(ママ)にして嘘とも真実(まこと)とも判別し難い物語がある。

 ストーリーは以下のようになっています。

 金星に夢中の男と切手が趣味の男がキャベツ畑の真ん中の家に下宿しています。ある夜に、畑のはずれに何かが落下します。ふたりが駆けつけると若い女が倒れています。
 ふたりは若い女を下宿に運びます。気がついた女は自分はペレランドラの第一女王リマだと言います。大臣の反乱で父も母も殺されて、自身も命を狙われているというのです。
 三人は下宿の一室で暮らすことになります。
 リマは言います、「ペレランドラに帰ったら 女王になる たいかん式の日は 山々から花火が打ち上げられて 地球からはふん火のように見える」と。
 数日経ったある日、怪しい三人組が現れて、あっさりとリマを攫われてしまいます。ふたりが気がつくと、部屋は荒らされ切手帳もなくなっています。
 一か月ほど過ぎて、TV のニュースで「金星の表面に火山の爆発が現れ」とやっています。続いてニュースは、非常に珍しい切手で、4万ポンド、約3千万円の値が付いたとして、切手マニアの持っていた切手が紹介されます。
 このニュースで金星に夢中だった男の世界は崩れ去り、以後、切手集めに夢中になります。一方、切手が趣味の男は金星の火山の爆発から、リマの言ったことを思い出します。そして、「やっぱり彼女は本当の金星人だったのかもしれない」と思い、天体望遠鏡を覗くようになるのです。
 最後に趣味の入れ替わりになるというところでお話は終わります。

 キャベツ畑の中といえば、練馬の24年組のことなのでしょう、作者自身にも関係するようですが。
 このマンガの面白さの第一は、扉絵の会話にあると思うのですが、どうでしょうか。この頃には金星の素顔も知られていたのに、敢えて金星を持ってきた作者には感服します。これが、太陽系外の星からだったなら、最終戦争シリーズは生まれなかったろうと思うからなのですが。

 果たしてリマは無事にペレランドラに帰れたのでしょうか。

 間もなく東北地方太平洋沖地震から九ヶ月です。ペレランドラよりもはるかに近い被災地なのですが、そこに帰れない人たちはまだ大勢います。いったいいつになったら帰れるのでしょうか。あるいは、ペレランドラより遠いのでしょうか……。


 タイトル『ペレランドラに帰りたい』
 書名『冬の円盤』
 出版社 白泉社 花とゆめコミックス
 出版年 1977年5月20日 第1刷発行

 『ナルニア国物語』で知られる C. S. ルイスの『金星への旅』を読んだのはこの4年ほど後です。原題を "PERELANDRA" といいます。奇想天外社で出版されたものです。


 今日でこのブログを始めて一年です。
 拙い文章を読んでくださった方に感謝いたします。