2018年7月31日火曜日

江島絵理の『柚子森さん』


 最終五巻の出たのが五月なので、新しいマンガです。普段はこんなに目の大きな女の子の表紙のマンガはめったに読まないのですが、この時はなんだか呼ばれたような気がして買ったのです。

 第一・二巻の登場人物は三人だけです。小学四年生の柚子森楓と高校二年生の野間みみかとみみかの同級生のしーちゃん(第二巻で志摩栞と柚子森さんに自己紹介をしています)です。第三巻では、その16にちらっと出ていた柚子森さんの同級生がその18.5で、りりはという名前で出てきています。第四巻ではその22までは、りりはと同級生の五十鈴がメインです。後半はひとりぼっちの柚子森さんです。第五巻では、結局仲直りするみみかと柚子森さん、そして親友になったりりはと五十鈴の四人といったところでしょうか。

 みみかが初めて柚子森さんに出会うのは、見開きにしゃがんでいる柚子森さんと猫のシーンです。この時は防犯ブザーを鳴らされかけます。その時に財布を落とし学校帰りに財布を捜すみみか、そこを通りかかった柚子森さん。柚子森さんのおかげで財布は見つかります。そこから二人は付き合い(?)始めます。七つ年上のはずなのに、みみかは柚子森さんに敬語で話すし、雷の怖いみみかは柚子森さんに怖がらせられないように慰められるしと、立場が逆転しています。
 そんな柚子森さんですが、しーちゃんにみみかのことをいろいろ聞かされて、嫉妬します。しーちゃんが帰った後で、柚子森さんの告白があり、悩んだ末のみみかの「私も好きです」があり、両想いだと知る二人です。
 その18.5で、りりはは柚子森さんに「あなたの大切なもん、ぜんぶ奪ってあげる」と言います。りりはは五十鈴を誘って、柚子森さんとみみかの後を付けます。柚子森さんと別れた後のみみかに近づくりりはですが、みみかに相手にされません。みみかのバッグから落ちたマンガを見て五十鈴が食いつきます。そのおかげでりりはの計画は成功します。
 翌日、柚子森さんがみみかを尋ねるとそこにはりりはと五十鈴がいます。りりはの言うことを真に受けて、みみかは柚子森さんとの付き合いを止めてしまいます。二人はそれぞれ胸に空洞を抱えます。一方りりはは作戦通りだったのですがちっとも楽しくありません。
 ある日、みみかのことを想い雨に打たれている柚子森さんにしーちゃんが声をかけます。みみかのうちに特攻かけようとするしーちゃんですが、涙を零している柚子森さんを見かけてりりははしーちゃんに跳び蹴りをして柚子森さんと逃げます。りりはは、みみかと仲違いさせたのは自分の計画だったことを話します。実はりりはも柚子森さんを特別な目で見ているのです。その柚子森さんから「腹黒くても。いまのりりはのほうが好きかな。」と言われるりりは。やっとりりはに追いついた五十鈴が見たのはにこ~としているりりはです。
 柚子森さんはりりはと別れたその足でみみかのところに向かいます。柚子森さんとみみかのやり取りがこのマンガのクライマックスなのでしょう、とても四年生とは思えないセリフが飛び交っています。道端で抱き合う二人をちょっと悔しそうに見やるりりはです。
 しーちゃんを加えた五人で夏祭りに行くところでメインの話は終わりです。柚子森さんとみみかの二人のブランコでの会話がここのキモです。みみかの「先に大人になって待ってますから」に「待ってて」と答える柚子森さん。
 最終話は柚子森さんの中学の入学です。毎日あなたを失って、会うたびあなたにまた恋をする、とのみみかの思いで終わっています。唄のセリフにあったような……。

 このマンガは徹頭徹尾女の子しか登場しません、男の子は遠景です。以前に扱った矢代まさこの「シークレット・ラブ」はレズを扱ったものですが男が出てきています。というより、女の子が女の子が好きなのに気づいて姿を消すというお話です。また少女マンガで女の子同士のキスシーンを初めて描いたといわれる山岸凉子の「白い部屋のふたり」は、舞台が外国で二人とも15歳ぐらいだったような。
 五巻まで続いたにしては、最終話を除いては時間は数ヶ月しか経っていません。それでもずいぶんといろんな事があって、と言ってもそれは終わりの二巻なのですが、時間が経ったように感じられます。
 マンガとはいえ、小学四年生とは思えないセリフの数々、でもそれも含めて面白く読めました。
 最終話の「私が一目で恋に落ちた、あのときの柚子森さんにはもう会えない。二度と会えない。」のシーンで、脳裏を掠めたのは「レ・ミゼラブル」の終わりのほうでジャン・ヴァルジャンが小さかったコゼットの服をみて涙を流す場面です。中学三年の頃に読んだと思います。章ごとにストーリーとは直接関係のない話が入っていて何故だろうと思いつつ読んだ記憶があります。

 「みみか」を一瞬「みかか」と読みそうになったのは2ちゃんねるに毒されているのでしょうか。


 書名『柚子森さん』
 出版社 小学館 ビッグスピリッツコミックススペシャル
 2016年12月17日初版第1刷発行 ① 大正義。
 2017年  3月15日初版第1刷発行 ②  最最最の高。
 2017年  7月17日初版第1刷発行 ③  1ページごとにため息ついて
 2017年15月17日初版第1刷発行 ④ 全ページが神域
 2018年  5月16日初版第1刷発行 ⑤  祝福につつまれる至高のガールミーツガール。

↑帯の惹句です