2010年12月13日月曜日

竹宮恵子の『ジルベスターの星から』

 このマンガについてはネットで検索するといろいろなマンガ評が出てきます。屋上屋を架すことになりますが、それでもこの作品は、はずすことができません。
 遠い未来、人類はワープ航法を知り、三万光年離れたトルメリウスCD五太陽系第七惑星ジルベスターにも植民をします。そのジルベスターからテレパシー映像で主人公トニオに語りかけてくるジル。
 ジルに、『地球(テラ)は今美しい?』と訊かれてぎくっとする主人公。さらに『空は!? 空は見える!?』と訊かれて『ここは地下都市だもん』と答えざるを得ないトニオ。
 紆余曲折がありながら、宇宙飛行士になり、すぐにもジルベスターに飛んでいきたいトニオ。しかし美しく若い女性科学者ヴェガの説得で天王星への調査に向かいますが、数ヶ月後にジルベスターへの移民が失敗したとの知らせが入ります。

 それから二年後、すべてから手を引き単身ジルベスターに向かうトニオ。そこに待っていたのは、枯渇しきった灰色の大地…、そして現れたジルの幻影は、緑ではないジルベスターの現実を知り、消え去ります。
 そのあとコンピューターから吐き出されたジルの日記を読み、ジルの真実、心情を知るのです。そして白いプラネット合金の墓碑に刻まれたリルケの詩
 『だれがわたしにいえるだろう
  わたしのいのちが
  どこへまで届くかを?』

 これで話が終わっても何の不思議もないのですが、でもジルベスターの荒廃したありさまだけではこれほど印象に残らなかったはずです。このマンガが見るものを引きつけてやまないのは、最後の一ページがあるからではないでしょうか。

 最後のページでヴェガは三万光年を超えてジルのもとへと向かってくるのです! ジルベスターの現実を知りながら、いいえ、知っているからこそ来るのです。『わたしは、なん人なん人も、あなたにジルを、あげようと、決心しました (中略) ひとりがだめなら、そのつぎのジルを たくさん、たくさん、ジルの兄弟を、つくりましょう……』

 実はこの最後の一ページを描きたくてこの物語を作ったのではないのか、それほど衝撃的でした。この最後のページは男には描けないのではないかと思わされたものでした。

 書名 『ジルベスターの星から』
 出版社 朝日ソノラマ
 昭和51年6月30日初版発行

 マンガ少年別冊 地球へ… 第一部総集編(昭和52年9月1日発行) 171ページ以降にもあります


 (蛇足)
 さて、このマンガでは男が他の星に行ってしまったのを女が後を追うという構図になっています。それから26年経って、『ふたつのスピカ』では、男女問わず宇宙に出ようとします。そして『ほしのこえ』では地球に残るのが男になるのです。

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