今の少女マンガを見慣れた人が見たら、つまらないと思うかもしれないけど、味わい深いマンガだと思います。
三歳の甥っ子の日常を描いたマンガで、事件が起こることもない、どこにでもある一コマ一コマ、もちろんそれだけではマンガになりません。その甥を眺める作者の心理が実によいのです。
『大人が子供と同じエネルギーで走りまわったら死んでしまうそうだよ』と母親からいわれより大きなこたえに気づく著者。
それは『おとなになったなら…』『からだでは走れなくなるけれど』『よりたしかな未来へと夢を追って』『心で走るようになる』ということでした。
これを読んだときの驚き、それはまだ若かったころは、心で走るのは若さの特権だと思っていたのが、こんなにも見事にひっくり返されたことによるものでした。
それからだいぶすぎて、旧ソ連の女流画家(名前を忘れてしまいました)の展覧会が県立美術館であったときに観に行ったのですが、若いころの絵は暗いのが多かったのだけど、晩年の絵を観てあっと思いました。明るい絵だったのです、まさに未来を見るような。
そのときこのマンガを思い出したのです。そうか、こういう事なのかと。
このマンガは昭和51年1月号に掲載されていますので、マンガに出てくるオイルショックは1973年のものですね、トイレットペーパーが店先から消えたという。
書名『たんたんたかゆき』
出版社 朝日ソノラマ
昭和54年3月5日初版発行
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