2011年3月6日日曜日

沖倉利津子の『卯子そのぐんじょう色の青春』

 沖倉利津子といえば「セッチとカッチ」のシリーズを取り上げるべきなのかもしれません。なぜこのマンガかといいますと、最初に手にしたのがこのマンガだったからです。タイトルと、少し上を向いた女の子の横顔に惹かれたのかもしれません。こぼれ落ちそうな目はいかにも少女マンガですが。

 小学校の図画の時間に、空を群青色に塗り続けクラスメイトから馬鹿にされ、暗い小・中学校時代を過ごした卯子。誰も知っている人のいない高校に進学して、明るい人間に生まれ変わろうとするのですが…。

 ひょんなきっかけから卯子は、クラス委員長田畑君のやっている自転車同好会に入ることになります。ところが、卯子には自転車に乗れないという特技(?)がありました。委員長の助けを借り、卯子は必死に練習をするのですが、いっこうに乗れそうにありません。
 卯子は、副委員長の笹野さん、田畑君の幼なじみで他クラスの額田君と友だちになります。この二人も自転車同好会に入っています。ところが、同じ一年生の何気なく友だちと話しているのを聞いて、卯子はまた落ち込んでしまいます。
 中間テストの結果を見て、さらに落ち込む卯子。退部を言って逃げ出します。

 次の日曜日、することのない卯子は弟の自転車を借りて練習をします。
 「乗れない自転車 明るくなりえない 人生ー そんなの イヤだ!」と、何度も転んでは起き上がってを繰り返します。「負けるもんか〜」と、大声を出して体の力が抜けて、何とか走り出せました。実は最初だけ田畑君が支えていたのですが、乗れたことにはかわりありませんでした。
 田畑君は前の日のことを謝るために、自転車で卯子のところに来たのでした、2時間近くを掛けて。

 夏休みになり、自転車同好会は本格的サイクリングを行います。脇を通った車に気をとられ道路脇に倒れ落ちた卯子は、幸い怪我はしませんでしたが、自転車がゆがんでしまいます。自転車の修理をする田畑君の傍らで、空を見上げた卯子は「うあー 群青色ー」と言いました。
 その後しばし、卯子と田畑君の空の色談議が続きます。それがタイトルになっている訳です。

 本当の空の色はどんな色かは人それぞれでしょう。でも、確かにどこまでも青い空は、深い深い青、群青なのでしょう。そしてその色は、小学生の使う絵の具ではとても出せなかったのでしょう。
 カヴァーの群青色は、もっと深い色のほうがよかったような気がするのは、わがままでしょうか。

 自転車について自分のことを考えてみると、乗れるようになったのは小学生のいつのことか憶えてはいませんが、何度も何度も転んだことは憶えています。自転車はいとこから借りました。

 このマンガを読んで、沖倉利津子の他のマンガも読んでみようと思ったので、このマンガに出合えたことは幸せでした。

 最後に、卯月は陰暦四月なのですが……


 書名『卯子そのぐんじょう色の青春』
 出版社 集英社 マーガレットコミックス 736
 1983年2月28日 第1刷発行

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