2011年2月20日日曜日

松本和代の『もな子…しゃべり勝ち!』

 この人の単行本は四冊しか出ていないようです。『もな子…しゃべり勝ち!』は二冊目です。

 高校二年生のもな子の、まぁ言ってしまえば、どたばた恋物語なのです、甘くはないけれども。といっても悲恋ではありませんので、ご安心を。
 主な登場人物は、もな子、親友のカンナ、他校生の樫本くん、北炭先生、そして恋敵の中学生の史織ちゃんの五人です。もう一匹、樫本くんの飼い犬ノリノスケを忘れてはいけませんでした。

 もな子は弁論部に所属していて、弁舌の立つほうだと思っています。そして、将来は環境庁の長官になると張り切っています(環境庁が環境省になったのは2001年です)。
 そんなもな子を心配して、カンナは恋のおまじないのカメを作ることを勧めますが、もな子は、それを一笑に付します。けれど、密かに「4時半の君」と名付けた男性に恋心を抱いているもな子は、カメを作って、その男性に渡そうとします。ところがノリノスケの登場でそれもできず、飼い主の樫本くんと知り合います。
 後日、もな子は知ることになりますが、「4時半の君」は、世界史の北炭先生として、もな子の前に現れ、樫本くんの家に大学生の時から下宿しています。

 この樫本くんは、来るべき食糧危機に備えて、巨大ナスを作る研究をしています。ナスはもな子の好物でもありました。
 あとは、どたばたコメディーになります。
 全体の2/3ほどのところから史織ちゃんが登場します。恋のさや当てが始まるのですが、マンガのタイトルとは違って、もな子は、口では史織ちゃんに敵わないのでした。
 樫本くんに、妹として好きだと言われて落ち込む史織ちゃん、元気づけようとして史織ちゃんに好かれて困り顔のカンナ、そして……。
 ナスの季節が終わり、つぎは巨大大根に挑む二人、話しながら笑いあう二人の後ろでは……でマンガは終わります。

 植物の巨大化以外は、いかにもありそうなお話で、さて何でこんなマンガが印象に残っているのかなぁと思うのですが。
 北炭先生以外の登場人物、特に樫本くんと史織ちゃんの思い込みの激しさが、このマンガの命なのでしょう。たぶん、樫本くんの中では、巨大植物を作るのが一番で、もな子はその次なのでしょう、でも、それはもな子の中ではどうでもいいのかもしれません。きっともな子は、巨大植物を作る夢を持った樫本くんを好きになったのでしょうから。

 絵はいわゆる少女マンガの絵ではありません。よく言えば個性的な絵です。また、マンガのタイトルとは異なり、もな子が誰かにしゃべりで勝つということは滅多にありません。


 書名『もな子…しゃべり勝ち!』
 出版社 集英社  集英社漫画文庫
 昭和56年10月25日 第1刷発行

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