2013年3月31日日曜日

双見酔の『空の下屋根の中』


 比較的新しいマンガを取り上げてみます。

 主人公香奈絵は高校卒業後、ニート(無職)になります。
 「高校を卒業して 大学に行くでもなく 就職をするでもなく 特にやりたいことの ない私は 世間でいうところの ニートになりました」から始まる連続の4齣マンガです。2巻の始まりのカラーページ(これは4齣ではありません)ではもっと切実に描かれています。

 主人公は一人娘で、父親は単身赴任で母親との暮らしです。おとうさんは二巻の三番目の章に登場するだけですが、常識人のようです。
 このマンガで、一番強いのはどうやらおかあさんのようです。時には辛辣なことも言いますが、広い心で主人公を見ているようです。
 同級生だった友だちが登場していますが、休みが平日で、普通の友だちとは休みが合わなくて主人公のところによく顔を出すようです。

 ある種の成長物語です。アルバイトをしながら職探しをして、普通に就職してマンガは終わっていますが、このマンガを読みながら、いろんな事が脳裏をよぎりました。

 なお、一巻の巻頭のカラー6ページとところどころに2ページずつ3ヶ所、そして二巻の巻末7ページには、ニートの男が主人公の別のストーリーのマンガが載っています。こちらのほうはある意味もっと重いマンガです。


 このマンガの描かれたのは。失われた20年も終わりに近づくころです。今は失われた30年の入り口とも言われています。バブルの崩壊後、「いざなみ景気」と呼ばれる73か月の景気拡大があったとはいえ、それは庶民には実感に乏しいものでした。なにしろ、収入がちっとも増えないのですから。というよりも、景気がいいって、どこの国のこと? というのが普通の反応でした。
 少し前に、(高度)成長期を知らない層が働いている人の半分を超えたというニュースがありました。今の状態が普通になってしまったのでしょうか。一方、今の状況の日本を、多少の皮肉をこめて "happy depression" と呼ぶアメリカの金融関係者もいます。

 わたしには、今の状況はわかりませんが、そんな状況さえもマンガにしてしまえるところが、日本の強みなのかもしれません。


 書名 空の下屋根の中 1巻 2巻
 出版社 芳文社
 1巻 2009年8月11日 題1刷発行  手元にあるのは2010年5月25日 第5刷
 2巻 2010年6月11日 第1刷発行

 1巻と2巻をまとめて買ったようです。

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