2011年11月13日日曜日

ちょっと休憩 『七ツ森』

仙台の北に大和町という町があります。そこに七ツ森と呼ばれる七つの小さな山があります。大和町のホームページに「七ツ森のできたわけ」と云うお話が載っています。
 https://www.town.taiwa.miyagi.jp/soshiki/soumu/7tsumori.html
 七ツ森は、地名で、七つ森ではありません、念のため。

 仙台に住んでしばらく経った頃、わたしはどうにもこの七つの小さな山が気になって仕方ありませんでした。もちろんまだホームページなんか無い頃のことです。そこで自分でこの山のいわれを考えてみたのでした。
 以下、少し恥ずかしいのですが、それを書いてみます。

 ずうっとずうっとむかしのこと、七ツ森の辺りは一面の田圃だった。
 ある日、男があぜ道で大きなたまごを拾った。そのたまごときたら、にわとりのたまごを十(とお)集めたものを十(とお)集めたよりも大きかった。男は村のものを呼び集めた。「はて、なんのたまごだべぇ」「さて、こんなたまごなんぞ見たこともねぇ」「食えるべぇか」などと話していると、堅い木を叩くような音がした。見る間にたまごが割れて中からヤモリのようなもんが出てきた。その大きさときたら、大きなネコよりも大きかった。わっと、みんなは逃げ出した。
 それからが大変だった。この生きもんは初めは人の家に入り込んで飯を平らげていた。そして、食えば食った分だけ大きくなった。飯を食い尽くすと、秋の田圃に入り込んで、刈り取り間近の稲を食いだした。辺り一面の田圃を食い尽くす頃には小山のような大きなもんになっていた。とても鍬や鎌で殺せるような代物ではなかった。
 ばけもんは稲を食い尽くすと、ぐっと頭を上げ鼻をひくひくさせて、北へ向かってのそのそと歩き出した。どうやら大崎の方へ向かうらしい。百姓たちは智慧を絞った。「毒を盛るしかあんめえなぁ」「けど、あいつは米しか食わんぞ」「その米に毒を盛ればいい」ということで、みんなは毒草を集めに集めた。なにしろあんなでかい身体だ、少しぐらいでは効くまい。毒草から搾った汁を炊きあげた飯に混ぜて、大きな握り飯をいくつもいくつも作った。それをばけもんの前に置いて、遠くから様子を見た。
 ばけもんは飯の匂いを嗅ぎつけると、のそのそとやってきて、握り飯を食いだした。その間にも、食った分だけさらにばけもんは大きくなった。「もうすぐみんな食っちまうぞ」「いっこうに弱ったふうには見えんなぁ」と、みんなは不安げに見ていた。
 そのうち、さすがのばけもんにも毒が回ってきて、のたうち回り始めた。その時、ばたばたさせていたしっぽが泉ヶ岳にあたった。その頃の泉ヶ岳は、今よりもずっと高くて、富士山のような形だったのが、しっぽがあたって頂が二つに割れた。こうして北泉ヶ岳と泉ヶ岳ができた。
 しばらくすると、ばけもんはぴくりともしなくなった。おそるおそる近寄ってみると、ばけもんは死んでいた。大きすぎて動かせなかったのでそのまま放っておいたら、いつの間にか、ばけもんは山になっていた。ばけもんの頭や背骨が今の七ツ森だということだ。

 おしまい


 どこかで聞いたことのあるようなお話かと思います。でも、民話とはそうしたものなのではないでしょうか。
 こんな話をあとふたつ作ってみたのでした。三つの中でこれが面白いと言ってくれた人のいたのが、このお話です。

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