この人のマンガには、はまるものがありました。特にタイムトラベルのシリーズには。また、『花図鑑』シリーズも面白く読みました。でも、まずは、表題のマンガから取り上げます。
N市H山動物園(もちろん名古屋市東山動物園です)のセメントの恐竜のところからお話が始まります。
春三月、四月から高校三年生になる久里子は、失恋したばかりです。その回想の中に手話をするチンパンジーがでてきます。利口な馬ハンスでないのは、久里子が高校生なので、そのほうが話として作りやすいからでしょうか。
京都大学霊長類研究所のアイ・プロジェクトは1978年から始まっているとのことですが、このマンガの頃はまだ一般に広く知られてはいなかったはずです。
久里子に声を掛けたのは、70歳を過ぎたおじいさん、落ち込んでいる久里子を元気づけようとします。その久里子の回想の場面で、自分では会話をしているつもりで、相手の顔色しか見ていなかったことに気づきます。
おじいさんは若い頃に、「相手の心を 読み取る能力が あれば」と、旧制四高の学生の頃の初恋の話をします。背景には旧制四高の「南下軍の歌」が流れています。
30年ぶりにあった初恋の人と見た映画が1954年の「ゴジラ」だったのでした。
久里子に「チンパンジーは どこですか?」と声を掛ける青年が現れ、説明をする久里子。そんな久里子を見て、おじいさんは言います。「当たりは ひとつだけじゃない 前後賞も 組みちがいもある」と。「新説 赤い糸の伝説」には、絵を観て、吹き出しそうになりました。
チンパンジーのところに行くと、青年はまだいました! 青年にチンパンジーの話をする久里子、青年は久里子に言います、「チンパンジーと いっしょに サーカスに 転職するよ」「いじらしい じゃないか」と。
久里子は、四月からこちらの大学生になるという青年と、つきあうことになります。
陽気のよくなった頃におじいさんが倒れたときいて、二人はお見舞いに行きます。病気で倒れたのではなくて、通信販売で買ったゲートボール養成ギプスのせいだったのですが。
おじいさんから見せられた初恋の人の写真を見て、びっくりする二人。なんと、息子さんの嫁さんにそっくりなのでした。
おじいさんは、自殺さえしかねないように見えた久里子が気になって、声を掛けたのかもしれません。でも、清原なつのの手にかかると、そんな気配はどこかにいってしまうようです。気持ちの切り替えを久里子は学んだように思えます。
さて、清原なつののマンガといえば、落書きにその魅力を感じるのはわたしだけでしょうか。このマンガにはそれほどありませんが、10(196)ページ3齣目はCMそのままですし、32(218)ページ4齣目は面白いことが書いてあります。また、31(217)ページ5齣目の背景には人に紛れ込んでいる4種類の動物がいたりします。()内は、ハヤカワ文庫版のページです。
この本の三番目には、『思い出のトロピカル・パラダイス』が載っています。読み終えて、ハインラインの『夏への扉』が思い浮かびました。気が向いたら、改めて書いてみようと思います。
書名『ゴジラサンド日和』
出版社 集英社 りぼんマスコットコミックス RMC-303
1984年7月18日 第1刷発行
ハヤカワ文庫
タイトル『ゴジラサンド日和』
書名『私の保健室へおいで・・・』
2002年6月10日印刷
2002年6月15日発行
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