2015年5月25日月曜日

川崎苑子の『ポテト時代』


 川崎苑子は以前に『いちご時代』を取り上げています。今回はその前の作品を取り上げてみます。作品としては『ポテト時代』の続編として『いちご時代』が来ます、

 『いちご時代』がほのぼのとしたメルヘン調なのに対して『ポテト時代』はユーモア・ギャグマンガになっています。なぜ『ポテト時代』なのかは最終話でわかります。
 就職浪人のそよ子さん(18歳)を中心にお話は進行します。長女のサラ(24歳)は小学校の先生、次女のスウ(21歳)は少女マンガ家、そして四女のふう子は幼稚園の年長さんです。

 第一話の最初の三ページ(扉絵があるので正味二ページと一齣)でかあさんが亡くなるまでの川風家の概要が書かれています。その後で、そよ子が家政婦という天職(?)に目覚めるきっかけが描かれています。道で倒れそうになっている沢くんを助けアパートに運び込み、食事を作り感謝されます。
 第三話で沢くんにおつきあいを求められ、一度は断ったそよ子ですが、女の見栄でつきあうことになります。以後のお話で沢くんはしばしば登場します。
 10話から12話では、遅いそよ子の初恋と失恋のお話です。それをはらはらしながら見つめる沢くん。
 13話では高校時代の友達に見栄からごちそうしてしまうそよ子のお話、15話では高校の同窓会のお話です。同窓会ではかっこいい男(沢くん)から何度もプロポーズされて困っているというそよ子を信じない友達と、最後に登場して酔って寝ているそよ子を抱き上げる沢くん、唖然とそれを見ている友達が描かれています。

 20話で家の狭さを嘆き、21話で沢くんの家のことを知り、22話で沢くんの実家に行きます。その家のすばらしさと掃除の行き届かなさ(沢くんのお母さんはアクセサリーの店をやっていて、かなり忙しいようです)、料理のひどさに、その場で通いの家政婦になることに決めます。
 24話では高熱を出して寝込むそよ子が、いろんな事を口走ります。そよ子らしからぬ事を、と家族は熱に浮かされたせいと思うのですが、そこにはそよ子の本音も混じっているのです。お見舞いに来ている沢くんにも普段は言わないことまで口にします。

 25話では元気のないふう子を見て、田舎のおじいちゃん・おばあちゃんからのランドセルが届かないせいと思う姉たち、そこにランドセルが届きます。早速ふう子にランドセルを背負わせ、似合っていると喜ぶみんな。けれどふう子が元気のないのは別のわけがあったのです。風邪を引いた友達が治らないと自分が「卒園生の言葉」を言わなければならない、それが嫌だったのです。
 最終話では、あいさつのけいこを無理矢理ふう子にさせようとするそよ子と、それを押しとどめる姉二人、お父さんの対立から始まります。そよ子を非難する三人に泣き出してしまうそよ子、そこに代表の子の風邪が治ったとの連絡があります。
 少し遅めの夕食にみんなは愕然とします。ジャガイモの一品料理だったのです。ケンカの後の夕食はイモばかりという習慣ができあがります。
 最後は「ちっともまいってないじゃないかとみんなは思った」「まいってたまるかとそよ子さんは思った」(以下略)で終わります。
 

 そよ子を主役にすると、このようなマンガになるのはよくわかります。
 四姉妹の性格設定がそれを物語っています。12話から見ると、サラを中心にすると、堅いお話になりそうな気もしますが、家の中での言動からするとそうともいえないのかなぁとも思ったり。
 面白可笑しくの中に、考え込ませるような場面も挟み込まれています。

 タイトルから考えると、作者はまず最終話を思いついてそれからストーリーを組み立てたと思われます。

 『いちご時代』を読み始めて『ポテト時代』との違いに初めはちょっと戸惑ったのも思い出です。


 書名『ポテト時代』
 出版社 集英社 MARGÅRET COMICS 1020
 1984年   11月30日第一刷発行

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